みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史

みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史を読了しましたので感想を

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概要

この本は大枠はみずほフィナンシャルグループ(FG)が、みずほ銀行の勘定系システムの刷新・統合プロジェクトを始まりから新システム稼働までの19年を追った内容。

前提として、もともとみずほ銀行は、

2013年7月1日に、第一勧銀を前身とする当時のみずほ銀行を、富士銀行・日本興業銀行を前身とするみずほコーポレート銀行が吸収合併し、それと同時に行名を株式会社 みずほ銀行に変更し     た。このため、現在のみずほ銀行の直接の前身は、この「みずほコーポレート銀行」・日本興業銀行・富士銀行となっている。 みずほコーポレート銀行 - Wikipedia



統合時にみずほ銀行みずほコーポレート銀行、それぞれがもともと持っていた勘定システムが、
結果として合併時は統合プロジェクトこそ動いていたものの、実際には統合されずにそれぞれ残ったままとなり、それぞれの勘定システムをリレーコンピュータでつなぐ形となっていた。


しかし統合プロジェクトことあったものの人員不足により進まなかったが、東日本大震災発生時に義援金口座として指定されていたみずほ銀行の口座に対して、
想定以上の入金があったことにより、口座のみならずシステム全体が結果として異常終了し、復旧に10日かかっている。

そのことをきっかけに勘定システムを一から作り直し、勘定システム[MINORI]を2019年リリース。



これらの一連の出来事について

という3章構成で、外からできるだけ見える範囲の状況を、著者の大元である日経コンピュータの目線から書かれている書籍になります。
(べき論等もあり著者の偏見も入ってますが)

感想

自分は実際に現場を経験していないが、別の勘定システムの保守や開発に携わったり、自治体のシステムについて、MINORI開発と同様に自動生成ツールを用いた開発を行ったことあります。
みずほ銀行ほどの巨大さややばさはなかったが、それでも毎日残業は当たり前、社内外政治による仕様変更、巨大すぎて誰も既存システムの全容がわからない。
などなど


みずほ銀行の開発案件を聞くたびに、みずほはやばい。
とネットや他のエンジニアから噂で聞いていたが、その全容は内部告発ぐらいしか当時はわからなかったが、

  • 開発関連会社1000社
  • 期間8年
  • 費用4500億円(スカイツリー7本分)
  • 工数35万人月

    と、実際に数字で見ると、本当に恐ろしい。

方針について

AS IS(現行踏襲)ではなく、[この時、こうあるべき]という、方針でできるだけ要件を定義している。
震災時に起きた障害の原因等が書籍に書かれており、その対策として経営方針としては正しいとは思うが

  • 既存の機能がわからない
  • 勘定の業務内容が開発者がわかっているわけではない。

という現場目線の問題

  • 経営者がIT。およびIT現場に疎い
  • 社内政治、事情

ことに発端する開発現場の苦闘。
さらには勘定システム開発という巨大開発費をもらえるプロジェクトに目をつけた外部ベンダーに対する争い。

日本のSI業界の負の部分がもろに出ているうなづきしかない内容となっています

終わりに

いろいろ言いましたが、IT業界,銀行業界に携わった人。
そうでなくても内容は業界外の人でもわかる用語で説明しておりますので、その点では読みやすくなっている本です。

著者の日経コンピュータの偏見も入っておりますが、
全体的にはみずほ銀行よいしょでもなくみずほ銀行を落とすでもなく、という内容となっております。
ただMINORIに携わった開発者の苦労が報われるような書籍の内容ではないのが残念であります。
エンジニア的な新しいことは書いていないので悪しからず